福岡高等裁判所 昭和41年(う)292号 判決 1966年12月06日
控訴人 原審検察官
被告人 杉原茂雄 外二名
検察官 森崎猛
主文
原判決を破棄する。
被告人杉原茂雄を懲役三月に、被告人吉武敬之助、同廿直司を各懲役二月に処する。
但し右各被告人に対し本裁判確定の日から一年間右各刑の執行を猶予する。
理由
検察官森崎猛が陳述した控訴趣意は、記録に編綴の検察官栗本義親提出の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は、弁護人山口伊左衛門提出の答弁書に記載のとおりであるから、これを引用する。
右控訴趣意第一点(事実誤認)について。
よつて本件記録及び原裁判所において取り調べた証拠に当裁判所における事実取調の結果を参酌して考察すると次の事実が認められる。すなわち、(一)原判示のような経緯によつて大正鉱業株式会社(以下単に会社という)から退職した被告人等の大正鉱業退職者同盟(以下単に同盟という)は昭和三七年六月一四日同会社と大正鉱業労働組合との間に炭労のあつせんによつて締結された休戦協定中の退職者に関する条項(退職者募集に関する取扱要領)が組合本来の目的を逸脱するものであるとして、その利益擁護のために、同会社を希望退職した八五〇名余のうちの四八五名を以つて同年六月二二日に結成されたものなるところ、結成以来未払賃金、退職金の支払請求の行動を起し、会社に対し団体交渉の申入をして来たが、会社は当初同盟との団体交渉に応ぜず、同盟側から福岡地方労働委員会(以下単に地労委という)に審査申請に及び同年八月下旬労働組合の資格認可がある迄之を拒否し続け、同年八月二三日にようやく第一回の団体交渉が開始されるに至つてからも同年九月三日の第四回の団体交渉までに、同盟が無効を主張していた前記協定中の退職金のうちのまず支払わるべき総額三、〇〇〇万円(退職金の一部頭金)についても、原則として社宅の明渡を条件として支払う旨の条項を楯にとつて、退職後もなお社宅を占有していた被告人等同盟員に対しては絶対に退職金等の支払に応じない態度をとつた(その間に一応七月一〇日迄に退職金の頭金を支払う言明をしながら遂に履行しなかつた)ため、団体交渉は進捗を見なかつたので、同盟は会社の右不当な態度に抗議して同年九月五日から実力行使に突入し、会社中鶴炭礦捲場付近に坐込をしたこと、(二)そして、右坐込は地労委のあつせんによつて同月八日一時中止されたものの、同月一四日地労委の示した前記退職金の頭金三、〇〇〇万円相当部分の即時無条件支払を内容とするあつせん案に対し同盟は同意したのに会社側がこれを拒絶したため、右あつせんは不調に終つたので、同盟は会社側の強硬な態度に抗議し同月二〇日から再び前記捲場付近に坐り込んだこと、(三)ところが、同年一〇月一一日会社の申請によつて福岡地方裁判所から妨害排除の仮処分命令が発せられ、会社側が同月一三日午前一〇時頃右坐込を排除すべく右仮処分の執行に着手しようとしたため、同盟は右捲場付近から退去するのやむなきに至つたこと、(四)しかして、被告人杉原は同盟の副委員長、被告人吉武、同廿はいずれも同盟員であつたところ、被告人等は右仮処分が執行されることを予知し、これとの抵触を避けて、仮処分執行の範囲外と考えた本件坑底坐込の抗議行動の手段に訴えるの余儀ない状態に追い込まれたため、右捲場付近を退去するに当り他の同盟員二二名とともに、同日午前一〇時五〇分頃前記中鶴炭礦新一坑エンドレス捲卸詰に立ち到り、同所の終点矢弦にクリップチエンを巻きつけ、鉄材を差し込み、エンドレスロープにクリップチエンを巻きつける等して右矢弦の上や付近に坐り込んだこと、(五)そして、同日午後四時頃会社の命により退去勧告のために会社採鉱係長佐々木一馬外三名が同所付近に来て被告人等に対し会社はエンドレスを捲く用意があるから退去されたい旨を告知するや、被告人等は同人等を取り囲み口々に何しに来たか、退職金を払え、退職金を貰えばすぐ出る」とか「捲けるものなら捲いてみろ」「俺達はいつ死んでもよいからお前達もここにおれ」「お前達を矢弦にくくりつけて運転してやる」「後でお礼に行くぞ」等と申し向け、あるいは佐々木係長等を背後から肘でこづいたり、折畳式鋸(但し戦り畳んだままのもの)を示して「これでひいてやらうか」との言辞を発して同人等の勧告を却け、同人等を退去させたこと、(六)かくして、被告人等は同月二二日午後一〇時頃までの間同所に坐り込んで同礦新一坑エンドレス捲機の運転を断念させて会社の同礦新一坑における出炭業務を妨害したことがいずれも明らかである。
そして当審証人小日向哲也、同東武志の各証言と原審における被告人等の各供述中の右認定と異なる部分は到底信用することができない。
しかして、本件公訴事実中の暴力行為等処罰に関する法律違反の訴因について、原判決は被告人等が佐々木一馬外三名に対し自ら暴行を加えたことは勿論、他の者と共謀して暴行、脅迫を加えた証拠がなく、かりにその際被告人等に多少の脅迫的言辞があつたとしても当時の諸事情に照せば、通常の団体行動に許される限度を超えたものとなすことはできないとして、被告人等に対しいずれも無罪の言渡をしているのである。
そこで、まず右訴因についての事実誤認の有無を検討するに、なるほど会社採鉱係長係々木一馬外三名が前記中鶴炭礦新一坑エンドレス捲卸詰付近に来たとき、同人等に対し同所に坐り込んでいた被告人等同盟員がなした前示の言動についての原判決の判示は、やや具体性を欠く憾みなしとしないことまさに所論のとおりであるが、前示のような紛争の渦中において、当時被告人等同盟員二五名は会社側の不当な態度に憤懣の情やる方なくこれに抗議するために前記エンドレス捲卸詰付近に坐込を始めたところ、偶々前記佐々木等が同所に来て退去勧告等を行なつたので、会社に対する憤懣の情から同人に対して前示のような不穏当な数々の暴言を浴びせあるいは佐々木等の肩を肘でこづく等の所為に出たものであつて、証拠上も明らかなように、被告人等同盟員のうちには佐々木等と知合の者も多く、しかも当時の状勢からして、右佐々木等会社職員による退去要求があつた位で簡単に坐り込みが中止される状況でなかつたことは会社側においても容易に判断できたと推測されるので、これに対して殊更に事を起すような行動に出ることは示威行動として拙劣な策であると思惟した被告人杉原において同盟員に対し暴力行為に出ることのないように厳に警告していたこと等の諸事情に鑑みれば、若干の押合があつたとしてもさまで険悪な状態であつたとは見られず、運搬司令室から鉱長に電話連絡をして間もなく昇抗しているので、右暴言も佐々木等を脅迫するためのものではなく、むしろ会社の命を受けて退去を求めてきた佐々木等に対しいやがらせをいい乃至はうつ憤をぶちまけたに過ぎないものとも見られ、この点に関する原審証人佐々木一馬、同大和忠雄、同蔭山利夫、同石橋隆義等の各証言は些か誇張された点も窺われないではなく、また同盟員のうちのある者が佐々木の肩をこづいたことも、それがなにびとによつてなされたものとも確認し得ないし、しかもその程度もさほどひどいものとは認められないこと前示のとおりであるので、右言動は被告人等同盟員と佐々木等との接渉中、当時右同盟員を指揮していた被告人杉原の意図に反してなんらかのはずみに右同盟員のうちのなにびとかによつてなされたものというべきであり、さらに前記のような暴言も相手を危険にさらし、畏怖させる意図を含んだ脅迫的言辞とはいまだ受けとれず、単なる嫌がらせの域を出でないものと認めるのが相当であるから、右暴行及び脅迫については被告人等が数人共同してなしたものと解し難いことは勿論、不法な有形力の行使たる暴行というに価いしないと解され、これ等を以つていまだ暴力行為等処罰に関する法律に所謂多衆の威力を示して暴行及び脅迫がなされたものとはなし難く、同法違反の所為があつたものとなすことはできない。そして所論援用の各証拠によつても右認定を覆えし得ず、記録を精査しても、右認定を左右することはできない。
してみれば、被告人等は暴力行為等処罰に関する法律違反の訴因についてはいずれも犯罪の証明がなく無罪というべきであるから、原判決の前叙のごとき説示の欠陥はこれを問題とするに足りず、検察官のこの点に関する事実誤認の論旨は結局理由がないものというのほかはない。
右控訴趣意第二点(法令の解釈適用の誤)について、
よつて、被告人等の前示業務妨害の所為が労働組合法第一条第二項にいうところの正当な争議行為であるか否かについて検討を加えることとする。
(一) 先ず論旨のうち会社の退職金不払は違法でないとの所論について考察するに、前記六月一四日の協定によれば、退職金支払について、「退職時総額三、〇〇〇万円を支給し、残額については爾後一一カ月の分割支給とする、右頭金の支給については原則として社宅明渡を条件とするが、各人の就職その他の条件を勘案して個別に協議決定する」となつていた。そして会社はこの協定を根拠として社宅に居住する同盟員等に対してはその支給を拒絶し続けたものである。そして其の後の団交において同盟側から右協定の無効通告をしたのに対し、会社は一応右協定を棚上げして交渉を進めることを諒承したが、遂に交渉は進捗せず、退職金の裏付として会社の計画する第二会社(石炭販売部門)の振出に係る約束手形の振出交付方の要求をも拒否して来たことも窺われる。しかし、元来本件のように労働協約あるいは就業規則に基いて支給される会社従業員の退職金は従前の雇傭契約に基礎をおく後払賃金の性質もあるのであつて、労働基準法第二三条第一項前段の規定によれば退職者の請求後七日以内に支払うべきものであり、同法第一三条によつて同法が定める基準に達しない契約は無効とされており、従つて大正鉱労組と会社との間に締結された前記六月一四日協定によつて社宅明渡を条件として退職金の一部を支給する旨定められたからとて、その効力は疑問なきを得ない。それで大正鉱において、その鉱員就業規則によつて退職後三〇日以内に社宅を明け渡すことが定つていたとしても、退職金の一部さえ支給しないまま社宅の明渡を求めることは不合理であり、前記協定を基礎として同盟員等の退職金債権が未だ履行期に達しておらず、その履行義務の発生は社宅明渡を条件とするものであるとは是認し難く、本件紛争発生の時点において会社の退職金不払を正当とすべき事由は発見することができない(未払賃金の不払についてはなおさらである)。却つて会社としては、企業家としての倫理をわきまえ、前記九月一四日の地労委のあつせんに従つて、退職金の頭金を無条件に支給し、会社の信用を回復したうえで同盟側からの出炭に対する協力を得て企業再建を軌道に乗せる途を選ぶべきであつたと思料される。それ故右の所論は採用の限りでない。
(二) 次に、所論によれば、被告人等の同盟は労働組合法上の組合たる資格を具備しないので、雇傭契約に基づく使用者と従業員との間に存すべき労働関係の存在を前提とする争議行為をなし得ないというにある。
しかし、会社の従業員が退職に際し、退職前の労働関係に基づいて発生した権利を行使する目的を以つて組織した団体は、右目的を達成する限度において労働組合たる資格を保有し、其の範囲内で争議行為をする権利があるものと解すべきである。なぜなら、従業員が解雇された場合には原則として労働関係が終了することとなるが、被解雇者に対する未払賃金、退職金等の支払の問題が解決されていない場合には、従来の労働関係はいまだ完全に清算されたものとはいえないので、従前の労働関係に基因した残された問題が存する限度において依然として労使関係は継続しているものということができるから、その問題の解決を目的とするために被解雇者によつて組織された団体はその範囲内において、労働組合たる地位を享有するものとして使用者に対し団体交渉を要求し、場合によつてはデモその他の示威行動のほか、争議行為をもすることが許されるものとしなければならない。なるほど、労働組合たる法律上の資格は、所論のように現在又は将来の使用者との間に存し、又は存すべき労働関係を前提とし、その関係における賃金、労働時間その他の労働条件並びに一般雇傭契約上の権利につき労働者に有利な経済的地位、待遇を獲得、維持、増進することを共同の目的として組織された団体にあるのが通常であること言を俟たないけれども、だからといつて従前の労働関係に基づいて発生した賃金、退職金等の支払を請求する権利の行使を目的とするものは、それが賃金その他の労働条件等の改善、向上を図ることを目的とするものでないから、労働組合としての法律上の利益を有しないとする所論には首肯すべき合理性を見出し得ない。けだし、所論のごとく解するとすれば、本件において、使用者側が従前の労働関係に基因する義務を、前示のような労働関係を前提とする協約(六月一四日協定)の拘束力を援用して、その履行を拒むことを認めながら、従業員側が同一の労働関係を前提とする義務の履行を要求してなす団体行動の権利を排斥することに帰着し、明らかに条理に反し、余りに公平を失するからである。
もとより、労組の争議行為は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行を以て本則とするが、それは通常の争議行為についていえることであつて、一応労働関係が終了した退職者の団体のごとく、特異な労働関係にあるものにあつては、自らその態様は限定され、同盟罷業等の争議行為はあり得ないけれども、従前の労働関係に基因する労働者としての上述のごとき権利を追求する目的をもつてする限り、その許された争議行為があることは是認せざるを得ないのである。すなわち、労働関係調整法第七条の規定によつても明らかなように、争議行為には労働者がその主張を貫徹することを目的として行うところの使用者の業務の正常な運営を阻害する一切の行為が含まれるのであつて、使用者がその経済的優位を利用して労働者を圧迫することに対して、その経済的利益の擁護のために対抗手段を講ずることは許されるものと解すべきであり、所論のように現在の労働関係が存在しないこと、また労務供給義務の不履行以外には争議行為はあり得ないことを根拠として前記のような特異な争議行為があることを否定する見解には賛同し難い。
(三) さらに所論は、仮に本件被告人等の同盟に労組に準じた団体行動をすることが許されるとしても、本件のような坐込行為は単なる示威行為として許容し得るものでなく、また正当な争議行為の範囲も逸脱するものであり、それが退職金の支給を請求することを目的としたものであつて、その目的が正当なものであつたとしても、その行為自体は正当化されないというにある。
ところで、前段で説示したような経緯で、団交は進捗せず、退職金の頭金すら即時支給を受ける望みを断たれた同盟側としては、あくまで退職金支払請求の権利を行使する必要上前に説示したとおり一種の職場占拠たる徹底抗議の手段に出たものであるから、それが賃上げ或は解雇撤回などの事項を目的とする通常の労働争議と異なり、使用者側の従前の契約上の義務の不履行を原因とするものであるからとか、またそれによつて会社の生産阻害の結果を生じたからといつて、直ちに争議行為として逸脱したものと断ずることはできないのである。それで原判決が、本件の坐込行為自体はその団体行動として許された一種の争議行為たる性質をもつとの趣旨を説示した範囲においては、あながち誤つた見解とはいえない。
しかしながら、争議権も無制限な行使が許されるものではなく、労組法第一条第一項に規定する目的を達成するためにした正当なものでなければならないことは多言を要しないところである。そしてその正当性の判断はその行為の場所、並びに手段、方法が全法律秩序の観点からして不法なものでなく、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱するものであつてはならないのであつて、この範囲を超えたものである限り、仮令その目的は正当なものであつても、これを許容することはできないのである。
これを本件についてみるに、被告人等の本件行為は、前述のように会社の不当な退職金支払義務の不履行に対抗してその支払を迫る団体の主張を貫徹することを目的とした団体行動であり、且つ会社側も社宅明渡後その敷地、建物を売却して再建の資を得る必要に迫られていたとはいえ、会社から退職して困窮の状態に追い込まれ、団交の途も絶えたために敢行されたものであることは証拠上これを窺うに足りるけれども、前に説示したところから明らかなようにそれは単なる一時的な坐込による示威行動ではなく、狭い坑底に二五名の同盟員が坐り込み、会社側から退去要求に来た職員に対して種々いやがらせの言動によつてその要求を拒否して坐込を続けたうえに、矢弦にクリップチエンを巻きつけ、鉄材を差し込み、エンドレス・ロープにクリップチエンを巻きつける等積極的な工作を施していることが明らかである。そして当時会社側としては労組の協力を得て生産再開を企図し、当日も多数従業員が作業位置について操業できるよう待機しており、水平坑道及びポケットには石炭を積んだ炭車があり、指示あり次第坑外に運び出される状態にあつたことも窺われる。しかも、右のごとき矢弦に対する工作は、それが破壊、損傷を伴わず、原状回復を困難にする状態ではないとしても、仮に捲揚機を運転すれば、坐り込んだ同盟員等の生命の安全に対する危険があるばかりでなく、如何なる損傷、事故を惹起するやも保し難い状態であつたのである。また会社の坑内交通の幹線である右矢弦に連なる新一坑四〇〇馬力エンドレス捲揚機の運転を中止させるべく採られた手段であるのみか、単なる一時的なものではなく、相当期間継続して会社に捲揚機の運転を断念させる意図を以て行なわれた(現に一〇月二二日午後一〇時迄継続されている)ものである。
してみれば、同盟員等の右坐込の継続は、その懐中電灯の持ち込み其の他により生ずる坑内保安上の問題は別としても、長時間に亘る捲揚機の運転休止が出炭機能を痳痺させ、会社の生産を著しく阻害し、ひいて会社の業務を妨害することは甚大であり、その損害は、同盟員等の退職金受領の遅延による損害に比すべきものでないことが推測される。のみならず、同盟側にも、なお合法的な解決に努力する余地が残されていなかつたとは即断し難く、会社側の社宅入替による解決方法についてもさらに検討し、あるいは裁判所に対する緊急救済措置の申請手段に出る等の方途もなかつたわけではないから、合法的な争議行為によつて、会社側の反省を促すに止め、決定的な業務妨害の手段に訴えることは避けるべきであつたとの非難を免れない。
果して然らば、仮令被告人等の本件所為が労働組合法上認められた団体行動乃至争議行為としての目的に出たものであつても、その手段方法は社会通念上許容された相当性の限界を超えたものであり、これを正当な示威行為といえないことは勿論、正当な争議行為とも認め得ないので、威力を用いて会社の業務を妨害したものと解すべく、刑法第二三四条所定の構成要件を充足し、同罪の成立を否定することはできない。
それ故、原審が本件所為は労働組合法第一条第二項により刑法第三五条の適用がある場合に該当し、威力業務妨害罪を構成しないものと判断したことは法令の解釈適用を誤つたものというのほかはなく、弁護人の答弁書中の所論は採用し難い。そして右の誤りは判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。論旨は結局理由がある。
そこで刑事訴訟法第三九七条第一項、第三八〇条により原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従いさらに判決をすることとする。
(罪となるべき事実)
被告人杉原茂雄は同盟の副委員長、被告人吉武敬之助、同廿直司はいずれも同盟員なるところ、被告人等は他の同盟員とともに会社に対し退職金等の支払方を要求して昭和三七年九月五日から福岡県中間市大字中間六、〇五五番地会社中鶴炭礦捲場付近に坐り込んだが、地方委のあつせん開始により同月八日から同月一九日まで右坐込を一時解除したものの、右あつせん不調により同月二〇日から再び前記捲場付近に坐込を行なつた。ところが会社側が同年一〇月一三日午前一〇時頃右坐込を排除すべく仮処分の執行に着手しようとしたため、被告人等は右捲揚付近を退去するのやむなきに至つたので、右仮処分の執行着手に先立ち他の同盟員二二名と共謀のうえ、前記中鶴炭礦新一坑内に立ち入り、同日午前一〇時五〇分頃同坑エンドレス捲卸詰に到り、同所の終点矢弦にクリップチエンを巻きつけ鉄材を差し込む等して同矢弦の上や付近に坐り込み、さらに同日午後四時頃会社採鉱係長佐々木一馬外三名が同所に来て会社において操業を再開しエンドレスを捲く旨を告げて退去を要求するや、同人等を取り囲み、口々に「捲けるものなら捲いてみろ」「お前達を矢弦にくくりつけて運転してやる」「後でお礼に行くぞ」「誰の命令で来たか」「俺達はいつ死んでもよいからお前達もここにおれ」等と申し向け、あるいは佐々木等の肩をこづくなどして同人等の退去の勧告に応ぜず、以つて威力を用いて同月二二日午後一〇時頃に至るまでの間同坑四〇〇馬力エンドレス捲機の運転を不能ならしめて会社の中鶴炭礦における出炭業務を妨害したものである。
(証拠の標目)
一 原審における検証調書
一 原審公判調書中、証人佐々木一馬、同宮原義克、同大和忠雄、同日下部隆信、同蔭山利夫、同石橋隆義、同和田昭人の各供述記載
一 原審公判調書中被告人杉原茂雄の供述記載
一 被告人廿直司の検察官に対する昭和三七年一一月一六日付供述調書
一 大和忠雄、二村健蔵、佐々木一馬の検察官に対する各供述調書
一 当審証人佐々木一馬の供述
(法令の適用)
被告人等の判示所為はいずれも刑法第二三四条、第二三三条、罰金等臨時措置法第三条に該当するところ、被告人吉武敬之助は昭和三八年一月一七日折尾簡易裁判所において暴行、傷害罪により罰金八、〇〇〇円に処せられ、右裁判は昭和四一年一月二七日に確定したことが記録上明らかであり、同被告人の判示罪と右確定裁判を経た罪とは刑法第四五条後段の併合罪の関係にあるので同法第五〇条によりいまだ裁判を経ていない判示罪についてさらに処断することとし、いずれも所定刑中懲役刑を選択して被告人杉原茂雄を懲役三月に、被告人吉武敬之助、同廿直司を各懲役二月に処し、情状により同法第二五条第一項を適用して右被告人等に対しいずれも本裁判確定の日から一年間右各刑の執行を猶予し、原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項但書に従い被告人等をして負担させないこととする。
なお本件公訴事実中、被告人等が佐々木一馬外三名に対し多衆の威力を示して暴行脅迫を加えたとの点については、既に説示のとおり犯罪の証明がないので、刑事訴訟法第四〇四条、第三三六条により無罪となすべきものであるが、右は被告人等の前示威力業務妨害の罪と一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、主文において無罪の言渡をしない。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡林次郎 裁判官 山本茂 裁判官 生田謙二)
検察官栗本義親の控訴趣意
第一点事実誤認について<省略>
第二点原判決は、法令の解釈適用を誤つており、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである。
一、原判決は、威力業務妨害罪の訴因について考えてみるとして「被告人らが会社に対する団体行動の一環として新一坑エンドレス捲卸詰に坐り込みを始めたこと、また、被告人らが同所に存する終点矢弦にクリップチエンなどを捲きつけなどして、これを運転するときは附近に存する被告人らの生命の安全をも保しがたいような状況に導き、会社をして坑内交通の幹線である右矢弦に連なる四〇〇馬力捲揚機の運転を断念させ、これにより出炭機能を麻痺せしめ、その結果会社に多大の損害を与えたこともこれを認めるに難くない。」としながら、「本件は被告人らが在職中取得した退職金債権の実現をはかるため、団結して会社に対し、前記行為に出でたものであることは明らかであるから、これを争議行為と見るに妨げなく、従つてその違法性の存否は、右所為が社会通念上相当と認められる範囲を逸脱しているか否かによつて定まるというべきである。そこで本件についてみるに(中略)被告人等の所為を以て労働争議の正当な限界を超え、刑事責任を問わるべき行為ということはできない。」としている。しかし、これは明らかに法令の解釈適用を誤つたものである。
二、もともと、本件大正鉱業退職者同盟の法的性格について考えてみると、それが労働組合法上の労働組合であるか否かは極めて曖昧である。右同盟は、原判決も認定しているとおり、大正鉱業株式会社と大正鉱業労働組合との間に昭和三七年二月以降全山同盟罷業の争議状態に入つたが、右労働組合の上部団体である炭労のあつせんにより同年六月一四日会社と組合との間に休戦協定が成立し、その協定は人員整理を主たる内容とし、退職者に対しては規定の退職金のうち総額三、〇〇〇万円をまず支払い、残余は分割払いとすることとなつていたところ、このとき退職した者のうち被告人三名を含む四八五名が大正鉱業退職者同盟を結成したものである。右退職者同盟については、「従業員が解雇された場合には、原則として労働関係が終了すると解すべきであるが、被解雇者が未払賃金等の支払を求めている場合には、従来の労働関係がいまだ清算されていないということができるから、被解雇者を以て組織する団体は、右の範囲において使用者に対し、団体交渉を要求し、場合によつては、デモ等の団体行動をすることも当然許さるべきである。」とする昭和三四年一〇月二六日の高松地裁丸亀支部決定(労裁集一〇巻五号九八二頁)があるけれども、その見解は、法的にしかく明快なものではない。福岡地方労働委員会も、右高松地裁丸亀支部の決定を一つの拠りどころとして、本件退職者同盟につき、労働組合資格の認可をしている(福岡地労委時報、記録七三二丁、七六九丁)けれども、一方「労働組合とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持、改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体であると規定するから、労働組合たるには、各構成員間に団結体たるにふさわしい共通の基盤としての利害関係と、共同に追求すべき目的とによつて貫かれる普遍団体的な連帯意識の紐帯を具備することを要し、且つその目的は労働条件の維持改善其の他経済的地位の向上を図ることを主とするものでなければならないことからいつて、現在又は将来の使用者との間に存し、又は存すべき労働関係を前提とし、その関係における賃金、労働時間其の他の労働条件並びに一般雇傭契約上の権利につき労働者に有利な経済的地位、待遇を維持し、増進し又は獲得するものでなければならないものと解すべく、右同盟員の意図する結成の目的は、単に労働関係の存否を決する解雇の効力をめぐつて使用者と対立抗争し、解雇の無効に関する自己の主張並びにこれに附随する争点を自己の有利に導くことのみに存し、賃金労働時間其の他の労働条件並びに一般雇傭契約上の有利な経済的地位、待遇の維持増進を計るものではないから、右退職者同盟は、ついに、労働組合法上の労働組合たる資格を具備することのないものと断ぜざるを得ない。」とする昭和二五年六月三〇日、名古屋高裁金沢支部の判決(最高裁、小松製作所事件の原審判決、集七巻一号一七五頁)があり、最高裁判所は、この点につき「右同盟には、憲法二八条並びに旧労働組合法一条二項の適用を受けるものであるとの論旨が認容され得るものと仮定しても、勤労者の団結権、団体交渉権その他の団体行動権の保障も決して無制限な行使を許容されているものではない。」(前掲小松製作所事件、集同巻同号一三〇頁)として、最終的結論を与えていないのであるが、労働組合の法的性格に本質に迫つて事を考究すれば、右名古屋高裁金沢支部の見解に賛同せざるを得ない。果して然らば、本件の大正鉱業退職者同盟は、労働組合というをえず、従つて団体交渉権、団体行動権を亨受し得ないものといわざるを得ない。然るに原判決は被告人等の前記業務妨害の所為を「正当な争議行為の範囲内のもの」と認定した点において、法令の解釈適用を誤つているものといわなければならない。
三、仮に、大正鉱業退職者同盟が、労働組合法上の労働組合であるとしても、それは「争議行為」を行ない得るものではない。もともと争議行為の本質は、労働者が労働契約上負担する労務供給義務の下履行にあり、その手段方法は、労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにある(最高裁大法廷、昭和三三年五月二八日判決、羽幌炭鉱事件、集一二巻八号一、六九四頁)のであつて、本件においては、大正鉱業退職者同盟員と大正鉱業株式会社との間には既に労働関係は消滅しているのであるから右最高裁判例にいう「労務供給義務の不履行」ということは存在するに由がないのである。尤も原判決は、「労働者の争議行為には、同盟罷業のほか怠業その他労働者がその主張を貫徹することを目的として行なうところの使用者の業務の通常な運営を阻害する一切の行為が含まれると解すべきであつて、特定の行為が労務提供の拒否でないというだけでこれを争議行為にあたらないとすることは(中略)労働法以前の思想であるとのそしりを免れない」旨判示しているが、右論理は、飽くまで使用者と労働者との労働関係の存在を前提として初めて肯定されるところであつて、いわゆる生産管理事件についての昭和二五年一一月五日、最高裁判所大法廷言渡しの山田鉱業事件(集四巻一一号二、二五七頁)の判決もビケッテイングに関する前記昭和三三年五月二八日言渡しの羽幌炭鉱事件の判決も、この前提に立つているのである。更に、いわゆる職場占拠においても事は同様であつて、労働関係の継続を前提として初めてその合法、違法が判断されることとなるのである。
以上のとおり、大正鉱業退職者同盟が仮に労働組合として法認されるものとしても、被告人等の本件業務妨害の所為は遂にこれを「正当な争議行為の範囲内のもの」と認めることはできないのである。
四、然らば、右退職者同盟が、労働組合として認められるにしても、それは、前記高松地裁丸亀支部判決がいうとおり、「未払賃金の支払いを求める範囲において使用者に対し、団体交渉を要求し、場合によつてはデモ等の団体行動をすることが許される」のみとなる。本件被告人等のエンドレス捲卸詰の坐り込み、矢弦にクリップチエンなどを捲きつけた行為がその団体行動として許容されるであろうか。その行為が団体交渉でないことは勿論のこととして、示威行為としてそれが許容されることになるか否かが問題である。それを判断するためには、その行為の場所並びに手段方法が検討されなければならない。
本件退職者同盟員等は、会社との間に労働関係に立つものではないから右エンドレス捲卸詰の場所、施設を使用するものでないことは明瞭であり、又会社が同退職者同盟に対して操業の権利ないし自由を有することも自明であるので右同盟員等の坐り込み行為は講学上のいわゆる職場占拠に当らず、全く違法というほかはない。加うるに矢弦にクリップチエンを捲きつける行為が到底許されないことは勿論である。されば、右被告人等の所為は示威行為としても許されないものというべきであるところ、前記エンドレス卸詰は鉱坑内であり、「入ることを禁じた場所」(軽犯罪法一条三二号参照)であると共に、坑内は爆発、落盤等の危険が多い個所であるため、鉱山保安法、石炭鉱山保安規則、に基づく保安規定により、坑内入坑者についてはいわゆる検身などそれぞれ規制がなされておりみだりに立ち入ることが許されないところとされているのである。被告人等は、この坑内にみだりに立ち入り、坐り込みを敢てした上、前記の如き操業防害行為に出たものであつて、これを以て正当な示威行為などということができないのは勿論のこととされなければならない。
五、以上、いずれの点よりするも、被告人等の所為は争議行為でないのは勿論、正当な団体行動とはいえないのであつて、その所為については刑法の一般原則にしたがい処理されるべきであるのに原判決が、たやすくそれを正当な争議行為の範囲内のものである旨判示したのは法令の解釈適用を誤つていることが明らかである。
六、次に、原判決は、「本件紛争が賃上げ或は解雇撤回など原則として使用者の義務であるところの約定退職金を請求するものであることが指摘されねばならぬ。」として「本件のように労働協約或は就業規則などに基づき支給される退職金は、使用者の恩恵的贈与と異り、本質的には労働者の退職を不確定期限とする後払賃金であると解せられ、従つて使用者は破産、会社更生など法に定める場合のほか、その支給を拒み得ないのであつて、その根拠となつている労働協約などに支給時期の定めのある場合、これに従うことは勿論であるが、すでに履行の終了している労働力給付の対償であるから、その支給を社宅明渡などのような他の条件にかからしめることは、前記憲法の各条文(註〇二八条、二五条)並びに労働基準法第一三条、第二三条、第二四条の各趣旨に照し到底許されないものといわなければならない。このことは、右のような条件を附することを内容とする労働協約が形式的にみて有効に成立した場合であつても、前記各法条が罰則を伴う強行法規と解せられる以上、結論を左右するものではない。」として、被告人等の所為が会社に対する対抗行動(原判決の判示によれば争議行為)として強力な対抗行為が許容されるものであるかの如き判示をしているが、前記のとおり、被告人等の所為が法的に許容されるものでない以上、被告人等の目的が退職金の支払いを目的とする正当なものであつたとしても、それは被告人等の所為を正当化するものではない。
しかし、原判決は本件行為は違法性を欠く理由として会社の退職金不払の事実について、これを違法とし、その違法行為に対して被告人等が対抗行動に出たものであるかの如き判示をしているともみえるが、若しそうであるとすれば、それは法令の解釈適用を誤つたものであるといわざるを得ない。
七、労働基準法二三条一項前段は、使用者の負担する賃金債務であつて、すでに履行期の到来したものについて、債務者の請求をまつて七日以内に支払うことを義務づけた規定であるから、退職と同時に支払うと定めたり、支払期日について特段の定めのない場合には、同条によつて七日以内の支払を義務づけられる。しかし、金額を一ケ月以内に支払うとか、半額を六ケ月後に支払うという支払期日の定めのある場合には、労働者は退職と同時に退職金を取得する権利はもつけれども、履行期、すなわちこの場合、所定の支払期日まではその請求権は発生しないから、労働基準法二三条によつて七日以内の支払は義務づけられず、その所定期日どおり退職金を支払つても労働基準法二三条違反は成立しないとされている(有斐閣、労働法大系一五二頁、なお東京地裁民事第一九部昭和三五年七月一三日判決、労働法律旬報四二六号)。右は支払について期限を附した場合であるが、ことは条件を附した場合も同様とされなければならない。
八、これを本件についてみれば、本件の退職金支払については、昭和三七年六月一四日、大正鉱業株式会社と被告人等大正鉱業退職者同盟員等も所属していた大正鉱業労働組合との間に締結された協定中「退職者募集に関する取扱要領」によれば、退職金支払条件として「退職時、総額三、〇〇〇万円を支給し、残額については爾後一一ケ月の分割支給とする。右三、〇〇〇万円の支給については、原則として社宅退去を条件とするが、各人の就職その他の条件を勘案して個別に協議決定する。」(記録七一三丁裏)となつていた。この社宅明渡しは、会社が明渡し後、その敷地、建物を売却し、会社再建の資金を得るためのものであつて(田中直正証言、記録一、〇〇五丁裏以下)、会社側は、右同盟との交渉においてもこの点は最後まで譲歩していないのである。ところで、右社宅利用の法律関係についてはその使用料の金額等より賃貸借とはこれを認めることができないので、社宅利用者は借家法の適用をうけるものでないことが明らかであり、その法律関係は使用貸借であつて、会社の鉱員就業規則の「社宅退去は退職又は解雇から三〇日以内に行なわなければならない。」(記録一、一〇八丁裏)との規定により退職後はその明渡しが義務づけられているのである。右のとおりの事情であるからこの社宅明渡しの条件は、何等不法違法のものではなく、又公序良俗に反するものでもない。然らば前記退職金支払条件は有効であつて、この条件が成就していないことは被告人等同盟員が社宅明渡しを行なわなかつた事実に徴して明らかである。条件が成就しない以上、前記のとおり、退職金支払の履行期は未だ到来せず、退職労働者の請求権は現実には発生しないのであるから会社は「七日以内の支払」は未だ義務づけられないものというべく、原判決が「退職金の支給を社宅明渡などの他の条件にかからしめることは到底許されないものであり、このような条件を附することを内容とする労働協約が形式的に有効に成立した場合でも、労働基準法の関係各法案が罰則を伴う強行法規と解される以上、結論を左右するものではない。」としたことは、明らかに法令の解釈適用を誤つているものといわざるを得ない。
九、右のとおり、退職金支払について、会社が労働組合との協定によつてそれに条件、期限を附したからといつて、それが労働基準法違反にならないことは勿論であるので、会社の措置のうち、仮に当を得ないものがあつたとしても、この点について無条件に退職金の支払を迫り、違法、越軌行為に出ることは法秩序の上から到底これを許容することはできないものである。さればこそ福岡地方労働委員会も「操業不能の状態に陥れている実力行使は、休止すべきである。」(記録七四一丁)「退職者同盟には、労務不提供という実力行使はあり得ない。そのような行動は世論を考えると不利になる。」(記録七四二丁裏)と勧告しているのである。
一〇、以上論じたとおり、原判決は、本件退職者同盟の法的性格、行為の違法性、退職金支払に条件を附したこと等について明らかに法令の解釈適用を誤つており、その誤りのために被告人等の所為をもつて「刑事責任を問わるべき行為ということはできない」としたのであるから当然破棄さるべきものと考える。
以上のとおり、原判決には事実の誤認並びに法令の解釈適用を誤つた違法があり、それらが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから到底破棄を免れないものと思料するので、更に適正な判決を求めるため控訴に及んだ次第である。